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社会地理学者の原口剛さん
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 都市の再開発などで、街が見違えるほどきれいになることがあります。「きれいな街」は誰もが歓迎する――と思いきや、社会地理学者の原口剛さんはその問題点を指摘します。話を聞きました。

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都市が経済成長の手段に

 都市の再開発などで「きれいな街」が広がっています。僕はそういう街への違和感をずっと抱いてきました。かつて都市の中で共存していたはずの貧しい労働者が見えなくなっているからです。

 「街を浄化したい」「貧しい人を遠ざけたい」という欲望は、近代の始まりから存在しました。明治時代には「貧富分離論」として都市から貧しい人を立ち退かせようとしたけれど、うまくいかなかった。しかし今は、貧しい人たちを立ち退かせる論理が暴走しています。都市そのものを経済成長の手段とすることが当然視され、公園をビジネス化し、公有地を民間に売り渡す。

「人情味」「下町風情」――消費される文化

 「きれい」は無条件に街の魅…

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